2023年度 建築学会大会 研究懇談会

 

「グローカル時代の景観デザイン」

 

主催:日本建築学会都市計画委員会グローカル景観デザイン小委員会

日時:2023年9月12日(火)午後

開催方法:オンライン開催(Zoom)

 

 盛会のうちに終了しました。関係各位、ご参加の皆さま、どうも有り難うございました!

 

 

■趣旨

 

グローバルとローカルが触発し合う3つのトピック「アフターコロナ」「再生可能エネルギー」「自然災害レジリエンス」を切り口に、景観の変容を把握・考察することで、今後の景観施策に向けた提言をまとめたい。

 

 

■プログラム

1.趣旨説明           志村秀明(芝浦工業大学)

2.主題解説

 (1)地理学の視点から     竹中克行(愛知県立大学)

 (2)アフターコロナ      栗山尚子(神戸大学)

 (3)再生可能エネルギー    沼田麻美子(土地総合研究所)

 (4)自然災害レジリエンス   益尾孝祐(愛知工業大学)

3.討論

4.まとめ            阿久井康平(大阪公立大学)

 

 

■開催結果(概要)

 グローカル景観デザイン小委員会では、(1)ウィズ・アフターコロナの景観、(2)再生エネルギーと景観、(3)災害レジリエンスと景観の3グループで議論を進めてきた。本研究懇談会では、「グローバルとローカルが触発し合う景観デザインを展望する時代」において、現在我々が直面している重要課題である上記3トピックに関する研究成果を報告するとともに、地理学の視点を踏まえてグローカル時代の景観デザインに関する議論を深めた。

 まず、竹中克行氏(愛知県立大学)より「近代の仮構からランドスケープを取り戻す」と題した講演が行われた。

 続いて、「ウィズ・アフターコロナの景観ビジョンとアプローチ」では、全体の視点の整理(栗山)の後に、客観的データから見る働き方・暮らしの変化と都市政策の取り組み(大野)、空間の使い方・変容する景観の「地模様」の視点から、欧州諸都市の取り組み(阿部大輔)、及び富山市大手モールにおける都市寄生型ストリートファニチャーによる公共空間の利活用(阿久井)、働き方と暮らしの視点から、イタリアを事例としてテラス席の展開と郊外の再評価(樋渡)、及び多様化する地方居住を豊かにする風景(佐藤)、シンガポールにおける広域レベルでみる空間の位置づけ・アジアの「国際ハブ都市」での動向(村上、志村)の報告が行われた。

 次に、「再生可能エネルギーをめぐる景観」では、国内外のソーラーパネルと景観に関する事例として、ドイツでのソーラーパネルが歴史的建造物に与える影響とエネルギー享受する住民との関係(沼田)、及び静岡県内の市町における景観計画の策定状況(阿部貴弘)の発表が行われた。また、風力発電に関して、北海道えりも町を事例とした地域脱炭素化促進区域を定める際の地域性を考慮した動的・段階的な区域設定の必要性(森)、地域密着型の再生可能エネルギーに関して、千葉県匝瑳市飯塚地区を事例としたソーラーシェアリングに関する事例(志村)、小売り電気事業者とまちづくりに関する事例(益尾・渡部)についての発表が行われた。

 さらに、「自然災害に対するレジリエンスと景観」では、まず防災・減災と景観の観点から、東日本大震災からの復興における海岸堤防の計画段階で採られた「負の外部性」緩和策(尾野)、流域治水における治水と良質なパブリックスペースを両立する河川の景観デザイン(星野)について報告された。さらに、歴史に学ぶレジリエンスと景観に関して、火災・水害に対する土蔵群や畳堤の日常生活での利活用の延長線上にある防災・減災(大窪・金度・松井)、自立再建住宅支援の展開(益尾)、イタリアの都市復興における歴史的な建物の修復・保全と衰退した空間再生の両立(益子)が報告された。

  以上を踏まえ、討論では、経済やコミュニティなど関連領域との間における建築学らしい景観の特色(竹中)、3つのテーマがゲームチェンジになる中、地域/社会空間の場所性を踏まえ、グローカルというキーワードでどう上書きしていくかの解釈の必要性(後藤)、保存と活用の二項対立を超え、形やプロセスに対する考えの深化としてのデザイン(嘉名)、公共空間の質向上・まちなみの個性の捉え方(卯月)に関する意見・議論が行われた。

(記録:高取)